2017/03/05

尾崎紅葉 多情多恨(岩波文庫)



尾崎紅葉 多情多恨
岩波文庫  第3刷
印刷 三陽社 平成25年11月6日
カバー 精興社
製本 中永製本





これは昨年読んだ本です。
物語はまさに「多情多恨」と呼ぶに相応しいもので、
これ以上似つかわしい表題はないのではと思います。

主人公の鷲見はとにかく、
亡くした奥さんが恋しくて恋しくて仕方がないのです。
奥さんもここまで慕われて幸せだ、というよりも、
こんなにいつまでも恋い焦がれられては
死んでも死にきれないのではないでしょうか。

親友の葉山はこんな時、
大いに力になってくれるのではありますが、
鷲見は葉山の奥さんが何処となく苦手であって、
葉山には会いたいけれども、
彼の奥さんが家に居る時はどうも
気が重たくなってしまうのです。
そこまで友人の女房を嫌う理由もないのでは
と思ってしまうのですが、
この辺りの描写が実に滑稽で、また微笑ましいのです。
要するに、人付き合いが苦手なのですね。

私には鷲見の人となりに、
どことなく共感できる部分もありましたので、
かなりの長編なのですが
とんとん読み進めてしまいました。

ちなみに、物語の処々に挿絵があって、
いいアクセントになっています。


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2017/02/13

二葉亭四迷 浮雲(岩波文庫)



二葉亭四迷 浮雲
岩波文庫 第12刷
印刷 法令印刷 平成28年5月16日 第12刷
製本 法令印刷
カバー 精興社



私も新本(新品の本)を買うことがあります。
むしろ以前は新本ばかり買っていました。
「浮雲」もそのひとつです。この本を買った頃はまだ
購入日を控えておく様な習慣もなかったのですが、
印刷日を見ての通り、それほど以前のことでもありません。

この本を買ったきっかけですが、
日本文学というものをきちんと読み込んでみるべきだと
その頃思ったからです。それでは一体いつの頃から、
今の人でも普通に読める様な文体で小説は書かれ始めたのだろうと
思うわけなのですが、そこで「言文一致」というものを意識します。
文語だと読んでも意味がよく解らないので、
口語体で書かれた小説を初期のものから読もうと思いました。

一般的にこの「浮雲」が言文一致の記念碑的な作品と
認識されている様なので、まず読んでみようと思って買ったのです。
巻末で中村光夫氏が解説している様に、
この小説は今日の体裁から見るとちょっと見慣れない部分があり、
たとえば最初の方は句読点がなく、文章の区切りとして
言葉と言葉の間に空白を設けていたり、
会話の部分でカッコとじ( 」)がなかったり、
白抜きの句読点( 、)は最初印刷ミスかと思いました。
今日の文章表現に至るまでの過渡期にあった作品なのですね。

でも物語自体は現代の作品と同じ様に、
読んでいるうちに引き込まれました。
今の小説と同じ様に愉しむことができました。
二葉亭の作品で私は「其面影」「平凡」も読んでいます。
そのお話はまたいつか。

それにしても、奥付を見て思ったのですが、
岩波文庫に本作品が加えられたのは2004年なのですね。
案外遅い様な気がするのは私だけでしょうか。