2017/02/26

大正時代の本に挟まっていた一枚の栞



裏返したところ


古い本のページを繰っていると、
ときどき栞やチラシ、読者アンケートなどが
挟まっていることがあります。
なんのこともない一片の紙ではありますが、
ほんの僅かな紙面から、
当時の世相を感じることができたりします。

この白水社の栞は今日の昼下がり、
何気なく自室の本棚から手に取った藤村の本に
挟まっていました。

眺めていると、面白いことに気づきました。
戦前のものだからでしょう、1枚目の写真では
横書きの部分は右から左へ向かって文字が書かれています。
でも裏返すと、今日と同じ様に左から右へ文字が書かれているのです。
どうしてわざわざ片面ずつ異なる表記になっているのか
よく分かりません。

そこで色々調べてみたところ、
どうやら戦前の頃でも、必ずしも右から左へ向かって
文字を書かなければならないといった決まりごとは無かったらしく、
左から書きはじめることもよくあったそうなのです。
たとえば新聞の広告スペースでも、
同じ紙面なのにある企業は右から書き始め、
別の企業では左から書き始める、といった具合です。

もうひとつ気になったのが、
この栞が印刷されたのは「いつ」なのかということです。
私は今日、暇を持て余していたので調べることにしました。
この栞に掲載されている白水社の書籍がいつ頃出版されたのかを
調べてみれば大体の時期が判るのではないかと思ったのです。
「国立国会図書館サーチ」を利用して調べた結果は次の通りです。

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・モンテーニュ
 随想録(1・2・3巻) 関根秀雄 訳 白水社1935年(昭和10年)

・ジュール・ルナール
 葡萄畑の葡萄作り 岸田國士 訳 白水社1934年(昭和9年)
 にんじん 岸田國士 訳 白水社1933年(昭和8年)
 明るい眼 高木佑一郎 訳 白水社1934年(昭和9年)
 商船テナシチー、赤毛(戯曲にんじん) 山田珠樹 訳 白水社1934年(昭和9年)

・ジャン・コクトー
 怖るべき子供たち 東郷青児 訳 白水社1930年(昭和5年)

・辰野隆
 さ・え・ら 白水社1931年(昭和6年)

・マルセル・パニョル
 ファニー 永戸俊雄 訳 白水社1935年(昭和10年)

・アンドレ・ジイド
 窄き門 山内義雄 訳 白水社1931年(昭和6年)
 贋金つくり 山内義雄 訳 白水社1935年(昭和10年)
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以上の出版年は各書籍の白水社に於ける最初の出版年となります。
(国会図書館が全ての書籍を網羅していればの話ですが)
新しく出版されたものを広告するための栞(チラシ)だとすれば
この栞が印刷されたのは恐らく昭和10年頃ではないかと思います。

この栞が挟まっていた本は
島崎藤村「春を待ちつつ」(アルス 第16版:大正15年11月1日)です。
この本が出版された時期と、栞が印刷されたと思われる時期には
約10年間のずれがあります。
この本が生まれた時から挟まっていた栞ではないのでしょう。
それは、本の出版社がアルスであり、
栞を作成した白水社でないことからも想像できます。
おそらく長い旅のどこかで、どんな出来事があったかは分かりませんが
この栞は藤村の本に宿ることとなり、私の部屋に来たのです。

最後にもう一つ、2枚目の写真の下の方を見ると、
本の送料を案内している部分があり、
樺太、台湾、朝鮮、満州へも発送可能であったことが伺えます。


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2017/01/28

頁の間から栞



ブログ内の記事カテゴリで「頁の間から」を作りました。
古書店で本を買うと、栞が頁の間に挟まっていることがあります。
栞だけでなく出版社からの読者アンケートなども。
昔の栞のデザインなど、ときどき面白かったりしますので、
このカテゴリを作りました。



この栞は先日読んだサルトルの「嘔吐」に挟まっていました。
「高楼のひと」いう詩が綴られています。
絵的な美しい詩ですが、誰の綴った言葉であるかは判りません。



裏側には詩と共に印刷されているこけしについて説明書きがあります。
サイズまで書いているということは、
このこけしを造った会社の商品広告の栞なのでしょうか。