2017/02/28

【読書日記】平成29年2月26~28日



2017-12
谷崎潤一郎 細雪(中央公論社単行本 第5刷)
530頁まで

妙子は相変わらずのお騒がせで、
赤痢が治ったと思えばまた、
生活態度や経済のことで
周りに多分の心配をかけることになります。

それでもどこか、
やはり姉たちは見捨ててはおけない様で、
勘当中でも芦屋の家に出入りすることを
幸子夫婦は許しています。

この小説には、本当に憎らしい人など出てきません。
皆が皆、他人に迷惑を掛けてしまう様なことがあっても
どこか愛着の持てる人ばかりなのです。
こんな姉妹や家族がいたら幸せだろう、
そう思わせてくれる物語です。


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2017/02/26

大正時代の本に挟まっていた一枚の栞



裏返したところ


古い本のページを繰っていると、
ときどき栞やチラシ、読者アンケートなどが
挟まっていることがあります。
なんのこともない一片の紙ではありますが、
ほんの僅かな紙面から、
当時の世相を感じることができたりします。

この白水社の栞は今日の昼下がり、
何気なく自室の本棚から手に取った藤村の本に
挟まっていました。

眺めていると、面白いことに気づきました。
戦前のものだからでしょう、1枚目の写真では
横書きの部分は右から左へ向かって文字が書かれています。
でも裏返すと、今日と同じ様に左から右へ文字が書かれているのです。
どうしてわざわざ片面ずつ異なる表記になっているのか
よく分かりません。

そこで色々調べてみたところ、
どうやら戦前の頃でも、必ずしも右から左へ向かって
文字を書かなければならないといった決まりごとは無かったらしく、
左から書きはじめることもよくあったそうなのです。
たとえば新聞の広告スペースでも、
同じ紙面なのにある企業は右から書き始め、
別の企業では左から書き始める、といった具合です。

もうひとつ気になったのが、
この栞が印刷されたのは「いつ」なのかということです。
私は今日、暇を持て余していたので調べることにしました。
この栞に掲載されている白水社の書籍がいつ頃出版されたのかを
調べてみれば大体の時期が判るのではないかと思ったのです。
「国立国会図書館サーチ」を利用して調べた結果は次の通りです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・モンテーニュ
 随想録(1・2・3巻) 関根秀雄 訳 白水社1935年(昭和10年)

・ジュール・ルナール
 葡萄畑の葡萄作り 岸田國士 訳 白水社1934年(昭和9年)
 にんじん 岸田國士 訳 白水社1933年(昭和8年)
 明るい眼 高木佑一郎 訳 白水社1934年(昭和9年)
 商船テナシチー、赤毛(戯曲にんじん) 山田珠樹 訳 白水社1934年(昭和9年)

・ジャン・コクトー
 怖るべき子供たち 東郷青児 訳 白水社1930年(昭和5年)

・辰野隆
 さ・え・ら 白水社1931年(昭和6年)

・マルセル・パニョル
 ファニー 永戸俊雄 訳 白水社1935年(昭和10年)

・アンドレ・ジイド
 窄き門 山内義雄 訳 白水社1931年(昭和6年)
 贋金つくり 山内義雄 訳 白水社1935年(昭和10年)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

以上の出版年は各書籍の白水社に於ける最初の出版年となります。
(国会図書館が全ての書籍を網羅していればの話ですが)
新しく出版されたものを広告するための栞(チラシ)だとすれば
この栞が印刷されたのは恐らく昭和10年頃ではないかと思います。

この栞が挟まっていた本は
島崎藤村「春を待ちつつ」(アルス 第16版:大正15年11月1日)です。
この本が出版された時期と、栞が印刷されたと思われる時期には
約10年間のずれがあります。
この本が生まれた時から挟まっていた栞ではないのでしょう。
それは、本の出版社がアルスであり、
栞を作成した白水社でないことからも想像できます。
おそらく長い旅のどこかで、どんな出来事があったかは分かりませんが
この栞は藤村の本に宿ることとなり、私の部屋に来たのです。

最後にもう一つ、2枚目の写真の下の方を見ると、
本の送料を案内している部分があり、
樺太、台湾、朝鮮、満州へも発送可能であったことが伺えます。


2017/02/25

【読書日記】平成29年2月24日



2017-12
谷崎潤一郎 細雪(中央公論社単行本 第5刷)
408頁まで

「細雪」を読む日々のなかで、
谷崎についてもっと知りたいと思う昨今です。
こんなことを聞きました。
「細雪」はそれまでの谷崎の小説とは違う、と。

たしかにそうかもしれません。
私は谷崎作品を沢山読んでいる訳ではありませんが
「痴人の愛」や「春琴抄」とはやはり感覚するものが異なります。
ある種の偏った愛情(愛着)とでもいうべき匂いが、
この作品にはまったくありません。
健康的な作品、とでも言ったら良いのでしょうか。

戦時中に書かれた作品ということもあり、
在りし日の平穏で美しい生活の日々を
谷崎はひとつの作品として留めておきたかった、
そう捉える考え方に、私も賛成です。

関西特有の言葉の美しさ、
姉妹の趣のある生活ぶり、
そういった空気を感じることが、
この作品の醍醐味なのかもしれません。


2017/02/25

ぐろりや会の古書市(東京古書会館)



今日は良い天気ですね。
神保町を歩き、帰りにぐろりや会の
古書市を訪れました。

文庫本でしか手にしたことのない作品を
初めて世に出た時の姿で見られるというのは、
何だかワクワクしますね。

何冊か買いましたが、
お金がなくてあきらめた本もありました。
まあ、今日のところは
縁がなかったということですね。

古書との邂逅はきっと
そういうものだと思います。
二度と巡り逢えないこともあれば、
また逢うこともあるでしょう。


2017/02/23

【古書検印集】川端康成 朝雲(新潮社版 初版)



川端康成 朝雲(新潮社単行本 初版)
奥付より



昔の本は奥付に検印が押されていました。
これも古書の、小さな愉しみのひとつだと思いますので、
ブログのカテゴリに古書検印集をつくりました。

2017/02/23

【読書日記】平成29年2月22〜23日



2017-12
谷崎潤一郎 細雪(中央公論社単行本 第5刷)
372頁まで

私が持っている「細雪」は
全三巻がひとつに纏まったものですが、
本文の区切りのところには上・中・下巻の表示があります。
今朝ちょうど、中巻にあたる部分を読み終えたところです。

妙子が板倉に想いを寄せることになることは、
何となくですが、水害のくだりを読んでいてふと
頭を過ぎりました。
ただ、その屈強な板倉が
まさか死んでしまうとは思いもよらず私も驚いています。
しかも、おそらくは感染症が原因で。

妙子は板倉が死ぬ前から、
おそらくもう駄目だろうと諦めも潔く、
というよりもそれで良いのかと思われるくらい
さっぱりしているなと、すこし呆れるくらいです。
合理的で心を理で制すことのできる妙子だから、
ということもあるかもしれません。
幸子や雪子とはそこが違うのだと思います。


2017/02/21

「春の雪」が二冊在るわけ



以前、「豊饒の海」第一巻である「春の雪」を
古書市で見つけて買ったことがありました。
そのあと、二巻〜四巻も古書店で見つけたら買おうと思っていたところ、
すこし経ってから神保町の古書店で四巻セットを見つけたのですが、
あいにくその日はもう他にも本を買った後で
それ以上抱えて持って帰る自信がなかった為にあきらめました。

一週間くらいならと思って翌週訪ねてみたところ
すでに買われてしまった後の様で見当たりません。
その日は歯科検診の予定があったのでそれ以上は探さず、
神保町から地下鉄に乗って池袋で西武鉄道に乗り換え椎名町駅を降り、
いつもお世話になっている歯医者へ向かっていたところ、
同じ通りにある古書店の店先に「豊饒の海」四巻セットが在ったのです。
もちろん、検診の帰りに買いました。

そういうわけで私の本棚には「春の雪」が二冊あるのです。
こういう作品は一巻ずつ買うと、
なかなか全巻揃えるのが大変かも知れません。
よほど希少な本でない限りは
最初からセットで売っているのを見つけて買う方が良いと思った次第です。

この「豊饒の海」ですが、
三島が人生をかけて死の当日に完成させた作品です。
よく知られている様に、最終巻「天人五衰」を書き上げてから
三島は自ら命を絶つのです。
やはり一連の作品を読んでから最後に読むべきなのかどうか、
すこし悩んでいます。

2017/02/21

【読書日記】平成29年2月20〜21日



2017-12
谷崎潤一郎 細雪(中央公論社単行本 第5刷)
296頁まで

妙子は仏蘭西への洋裁留学を断念しました。
直接の理由は玉置先生の洋裁学院が思ったよりも
早期に再開できる見込みが立ち、
共に渡仏しようとしていた先生自身が仏蘭西ゆきを
やめてしまったからなのですが、
ただ、そもそも本家の義兄が、
身内から職業婦人が出ることを良しとしない考えである
ということで、そういった問題が残るかたちとなりました。

妙子自身は本家を説き伏せてでも洋裁家として
大成するつもりなのですから、
本家との対立は今後避けられないかも知れません。

いったいこの時代は、
女性が独立するということがこうも大変なものかと
思ってしまいます。今日であれば、
妙子ほどしっかりした人生設計ができていれば
むしろ賞賛されるくらいでしょう。
当時とすれば、妙子は先進的の考えを持っていたのですね。
周りの同意を取り付けなければ夢に向かって行けない、
窮屈だったと思います。

2017/02/20

坂口安吾 白痴(中央公論社 単行本)



坂口安吾 白痴
中央公論社 単行本 初版
印刷 文壽堂工場 昭和22年5月1日
装丁 原 弘







表題作「白痴」を含む小説集です。
坂口安吾というと、
下着姿であぐらをかいて一心不乱に
原稿用紙を引っ掻いている様な印象です。

以前、堕落論について論じている番組を見て、
安吾に興味がずっとありました。
ですが作品自体は実のところ読んだことがないのです。

聞いたところでは、
同じ無頼派と呼ばれる作家であっても、
太宰とはまたタイプの異なる人間らしいのです。

2017/02/20

【読書日記】平成29年2月19〜20日



2017-12
谷崎潤一郎 細雪(中央公論社単行本 第5刷)
262頁まで

やっと真ん中くらいまで読み進めたでしょうか。
一月は色々の作品を読み進めた感がありますが、
今月はもうすっかり「細雪」に掛かりきりの状態です。

長編だから、ということもあるのですが、
さいきん仕事から帰った後に疲れてしまって
寝る前の読書がいまいち捗らず、
もっぱら早朝の本読みが主になってしまっていることもあります。

朝はいつも4時45分きっかりに起床して、
朝食と昼の弁当を作り、
7時すぎくらいには事務所に着いて
仕事前に9時近くまで読書、というパターンなのですが、
この時間がいちばん物語に集中できる様に思います。
ちなみに通勤電車のなかでは、私は本を読みません。
スマホも見ません。
音楽を聴くか、何も考えずに放心する時間
ということにしています。

夜の読書はコーヒーが欠かせなく、
いまもお湯を沸かしてコーヒーを入れたところです。