2017/04/30

【読書日記】大江健三郎 見るまえに跳べ



2017-22
大江健三郎 見るまえに跳べ(新潮社版 第12刷)
112頁まで

ここ数日は、また大江さんを読んでいる。
表題作を含む小説集。
巻頭の「見るまえに跳べ」を読み始めて、
既視感の様なものを感じた。

以前読んだ大江作品のなかに
「われらの時代」という作品があって、
その作品も主人公は娼婦と暮らしていた。
描かれて居る女性像もどこか似通っている。
どちらの作品も、倦怠な生活から決別すべく、
主人公は女に別れを告げる。

調べてみたところ、
「見るまえに跳べ」は昭和33年に文学界に掲載、
「われらの時代」はその翌年に中央公論社から刊行されたとのこと。
ほぼ同じ時期に書かれた作品だった。

表題作も、それに続く「暗い川おもい櫂」も
人生のなかで初めて遭遇するものに
自信を持ち、自信を失い、茫然自失する、という
青春の暗い側面を描いている。

大江さんの作品に流れている色調は個人的に
私と合う、と思う。
小説に楽しさの様なものを私は求めていなくて、
どちらかというと、読んだ作品のなかに
私のこれまでの生活のなかで感覚した様なものを
見つけることができた時、
それを作家さんの視点から再確認している様なところが
私にはあるかもしれない。


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2017/04/24

【読書日記】井伏鱒二 山椒魚・遙拝隊長 他七篇



2017-21
井伏鱒二 山椒魚・遙拝隊長 他七篇(岩波文庫 第8刷)
読了

ここ数日、鱒二さんの小説集を読んでいた。
「山椒魚」は以前も読んだことがあり再読。
たしかあの時は新潮文庫だったと思う。
「屋根の上のサワン」もたぶん、読んでいる。
この岩波文庫はたしか均一台で見つけ、
もともと再読しようとして買った。

今朝は居眠りでひと駅乗り過ごし、
戻りの電車をただ待っているのも何だからと
「へんろう宿」から読み始めたら、
小説の冒頭にこんな一節が。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いま私は所用あって土佐に来てゐるが、
大體において用件も上首尾に運び、先ず何よりだと思つてゐる。
ところが一昨日、バスのなかで居眠りをして、
安藝町といふところで下車するのを遍路岬といふところまで
乘りすごした。安藝町に引き返さうとすると、
バスはもう終車が通つてしまつたといふのである。
安藝町まで六里だといふ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

居眠りをした為に読んでいる私と重なって、
思わず微笑む。

鱒二さんの小説は、他のひとも言っているけれど、
どこかしらユーモアがある。
山椒魚などほんとうにそう思う。
サワンもそうだ。
愛嬌があって、可笑しくて、
どこか切ないのだ。


2017/04/20

【読書日記】安部公房 方舟さくら丸



2017-20
安部公房 方舟さくら丸(新潮社版 初版)
読了

読み終わった。
物語の最後で主人公の太った男(通称:もぐら)は
方舟を手放すことになる。
この作品は地下の採石跡地が舞台だからか、
どこか息苦しい感じを
私も知らぬ間に抱いていたかもしれない。
最後はどこか清々しい様な開放的なものを感じた。

閉ざされた空間のなかで集団生活をすれば
自ずと上下関係の様なものが出来上がってくるというのは
人という生き物の性質だと思う。
命令をする者、それに従う者。
ちょっと引いた目線で一連の出来事を眺めてみると
すこし滑稽にすら思う。


2017/04/18

【読書日記】安部公房 方舟さくら丸



2017-20
安部公房 方舟さくら丸(新潮社版 初版)
234頁まで

四分の三くらいは読んだだろうか、
後半に差し掛かっている。
今までのところ大半が
採石跡地での出来事を描いていて、
また登場人物も少ないので
何となく戯曲を思わせる様なところがあるなと思う。

「他人の顔」、「砂の女」や「箱男」などに較べると、
人物描写が人間くさいなと感じる。
今まで読んで着た公房さんの作品と
すこし違った匂いがするかもしれない。

2017/04/16

【雑記】畳のうえで春の風と



今日は朝から掃除洗濯をしている。
掃除は終わった。
洗濯機はあと二回くらい。
ぐるぐる回るその音を聞きながら
インスタントの珈琲を淹れた。

網戸の風が気持ちいい。
たぶんこんなに上出来の風は
今年最初で最後だろう。

窓外ではシジュウカラが
ツツピと鳴いてる。
洗濯物が揺れている。

私の部屋は丘の上だから、
風も素直だ。



2017/04/15

【蔵書より】谷崎潤一郎 鍵(中央公論社版)



谷崎潤一郎 鍵
中央公論社版 初版
装丁・挿画 棟方志功
印刷 三晃印刷 昭和31年12月1日
色版印刷 求龍堂印刷
製本者 毛利伸夫
製函者 加藤三吉









物語の内容も素晴らしいけれど、
この本は何より、版画家 棟方志功が
装丁・挿画を手がけたことが
特筆すべきところかと思う。

この様な本を手にすると、
書籍は総合芸術と思う。


2017/04/13

【読書日記】安部公房 方舟さくら丸



2017-20
安部公房 方舟さくら丸(新潮社版 初版)
58頁まで

また公房さんを読みはじめた。
久しぶりに「砂の女」を再読しようかと
瞬間頭をよぎったけれど、
以前買ったこの本がその横に並んでおり、
やっぱり未読作品の引力には敵わなかった。

主人公の太った男は採石場の跡地に棲み、
この世界に危機感を抱いており、
来たるべきその危機を共に乗り越えるために
一緒に暮らす住人を探し回っている、というお話。
男はその採石跡地を「船」と呼び、
共に船で暮らす人(船員候補)にいつ出会っても良いように
外出する時は常に乗船券を持ち歩いている。

乗組員は誰でも良いという訳でなく、
男独自の審査基準の様なものがある様子。
審査に合格した人だけに乗船券を渡すという。
いつもながら公房さんの不思議な世界が始まった感じ。
この世の危機ってなんだろう。

安部公房の未読作品が
まだ幾つも残っていることに、
私は幸せを感じる。


2017/04/12

【読書日記】吉行淳之介 娼婦の部屋



2017-19
吉行淳之介 娼婦の部屋(文藝春秋新社版 初版)
読了

この小説集を読み終わり、
吉行淳之介という作家が好きになる。
というか、もっと若いうちからこの作家に
触れておけばよかった。

昨日挙げた作品のほか、
「白い神経鞠」、「人形を焼く」、「鳥獣蟲魚」も好きな作品。
共通しているのはどの作品も、
描かれている女性が魅力的だということかもしれない。
「鳥獣蟲魚」では自分と他との関係について
女性との関わりの中で描き出してる。

気に入ったところを引用してみる。(260〜261頁より)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私が、彼女の左肩をぐつとうしろへ引張つたとき、
その貝殻骨の下に、思いがけないほど大きな暗いくぼみが
できたのに氣付いた。私は彼女をそのままの姿勢にさせて、
心臓の裏側のところの、暗いくぼみを見つめた。
「そうすると、骨がないので、落ちくぼんでしまうの。」
そして彼女はわざと陽気な聲を出して、
「そこに物が置けるのよ。マッチ箱でも、置いてごらんなさい。
さあ、はやく置いてごらんなさい。」
畳の上に、彼女の耳飾りの片方が、ころがつていた。
ガラスの耳飾りが、電氣の光をうけて、閃いていた。
その耳飾りをつまみ上げた。彼女の心臓の裏側の小洞窟で、
かすかな光が白く浮び上がつた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


2017/04/12

【蔵書より】太宰治 八十八夜(南北書園版)



太宰治 八十八夜
南北書園版 初版
印刷 関東印刷(株) 昭和21年2月25日
配給元 日本出版配給統制(株)


以前の所有者のものとおぼしき蔵書印。







表題作を含む小説集。装丁が私好み。
ネットで調べてみたところ、
「八十八夜」が初めて単行本の中に収められたのはこの本ではなく、
昭和15年4月20日に竹村書房から刊行された
小説集「皮膚と心」に於いてが最初だったとのこと。


2017/04/11

【読書日記】吉行淳之介 娼婦の部屋



2017-19
吉行淳之介 娼婦の部屋(文藝春秋新社版 初版)
170頁まで

吉行淳之介を読んでいる。
小説集という体裁をとっているけれど、
著者自身の過去、特に子供時代について触れた
随筆と呼んでいい作品も含まれる。
文学を志していた父のことや、
気性移りの激しさで苦労させられた脚の不自由な祖母のことなどが
語られる。

読み進め、もう後半に差し掛かっている。
この本の表題にもなっている「娼婦の部屋」、
そして「寝臺の舟」が今のところ印象的。