2017/02/11

【読書日記】2017年2月9日(追記)



2017-11
開高健 輝ける闇(新潮社単行本 第5刷)
読了

「輝ける闇」を読み終えました。
物語の最後は前線で敵に遭遇し、四方八方から弾丸が
飛んでくる中を退却する場面で終わります。
この辺りの描写は息遣いが聞こえてくる様ですらあります。

以下はその中の一節です。(240頁より)
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私は迎えた瞬間にふるえあがって閉じた。鼻を枯葉におしこみ、
私は眼を開き、眼を閉じた。暗い肥沃な枯葉の匂いが鼻を刺した。
眼は瞬間に見た。無数の蟻の群れが右に左にせっせと勤勉に
はたらき、一匹の蟻は体の数倍もある病葉の一片を顎に咥えて
よろめいていた。
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この描写は、そこに居た人でなければ書けないと思います。
戦闘中、地面に顔を押し付けると、
いつ死ぬかも判らない様な状況にあってさえ、
まったくこの差し迫った状況に居る自身とは無縁なものが、
そういうものが眼に留まるという現実。
人間の命のやり取りの現場であってさえ、
その足元ではいつもと変わらず蟻たちが生活し続けているという現実。
どこか、人間の営みが滑稽なものにさえ思えます。
この一節はすばらしい表現だと思います。

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