2017/03/20

【読書日記】坂口安吾 白痴



2017-14
坂口安吾 白痴(中央公論社版 初版)
読了

表題作の「白痴」が読みたくてこの本を買った訳ですが、
先日も書いた「外套と靑空」がとても印象に残っています。
暗く湿った日々を描く中での最後の部分、
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暗闇を這いずるやうな低い情痴と心の高まる何物もない女への否定が溢れ、
その暗闇を逃れでた爽かさが大気にみちて感じられた。
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こういう感覚は私も分かる気がします。
とくに思春期の頃。何か暗く、けれども抗えないものを感じ、
そこに身を浸すことを夢想する時間。そういったものから抜け出て、
現実の白昼へ玄関から飛び出した時の様な、
そんな感じを抱きます。

表題作「白痴」にも、終わりの方に印象に残る部分があります。
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女の眠りこけてゐるうちに女を置いて立去りたいとも思つたが、
それすらも面倒くさくなつてゐた。人が物を捨てるには、たとへば紙屑を
捨てるにも、捨てるだけの張合ひと潔癖ぐらゐはあるだらう。
この女を捨てる張合ひも潔癖も失はれてゐるだけだ。
微塵の愛情もなかつたし、未練もなかつたが、捨てるだけの張合ひもなかつた。
生きるための、明日の希望がないからだつた。
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この女というのは主人公にとって肉欲を満たすものであったはずなのに、
もう、捨てるのも面倒な存在になってしまっています。
今しがた、一緒に空襲の大火の中を逃げてきたというのに。

ここでもやはり(白痴の女という)情痴に終止符を打つ訳ですが、
「外套と青空」の様な、そこから抜け出た開放感の様なものはもはや無く、
希望のない終わり方です。


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