2017/03/19

【古書検印集】永井荷風 勳章(扶桑書房版 初版)



永井荷風 勳章(扶桑書房版 初版)
奥付より



残念ながら朱が薄く、判読が難しくなっています。
「永井荷風」という部分、それと末尾の「之章」だけが
微かに読み取れます。


2017/03/18

斎藤茂吉 自選歌集 朝の螢(改造社版)



斎藤茂吉 自選歌集 朝の螢
改造社版 新装版初版
印刷 凸版印刷 昭和21年10月30日
配給元 日本出版配給(株)
装幀 石井鶴三





ところどころに書き込みがあります。
前の所有者の方はずいぶんと、歌に熱心な方の様です。



「朝の螢」は茂吉にとって最初の自選歌集とのことです。
表題は自身の歌の一節から採ったのだと、
茂吉自身がこの本の巻末で書いています。

「草づたう朝の螢よみじかかるわれのいのちを死なしむなゆめ」

巻末にはこんなことも書いてあります。
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けれども、歌集「朝の螢」は私のこころの悲しく痛ましき時に作り得たものである。
縁ありて、この歌集を読む友よ、ねがはくは如是のゆゑよしを忘れたまふな。
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何があったのでしょうか。
斎藤茂吉記念館のホームページによると、
「朝の螢」は大正14年4月20日に発刊と記されています。
年譜でわかることは、養父の経営する青山脳病院が
この自選歌集が世に出るすこし前に全焼するという出来事があったということです。
そのことが関係しているのでしょうか、
ひとの心の内のことですから分かりません。

ところで、私の本棚にある「朝の螢」は新装版です。
この新装版に寄せて、茂吉は最後のページに
こんな後記を残しています。
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本書は戰爭中しばらく出版を中止してをりましたが、いよいよ平和となり、
新時代に入りましたので玆に新裝して二たび出版することとなりました。
どうぞまた續々お讀みくださることをお願いたします。
私は戰爭末期に山形縣に免れまゐりまして、上ノ山、金瓶、大石田と移り住み、
目下大石田に居ります。

昭和二十一年八月 斎藤茂吉
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2017/03/12

志賀直哉 早春(小山書店版 単行本)



志賀直哉 早春
小山書店版 単行本 第3刷
印刷 帝都印刷(株) 昭和17年11月5日(二千部)
製本 山田製本工場
配給元 日本出版配給(株)







こういう本を見るとつくづく、
本というものは総合的の芸術だと思います。
中身の物語はもちろん、書体や活字の大きさバランス、
紙の質感、色の合わせ具合、装画。
こういったものがすべて併せられて、
ひとつの作品になるのだと思います。

函の紅がいいです。取り出すと、
表紙にも紅い花が美しいと思います。

小山書店、という出版社を私は初めて知りました。
Webで調べてみると、かつて存在した出版社だそうですが、
D・H・ローレンス「チャタレイ夫人の恋人」(伊藤整 訳)を
出版したことで、わいせつ物頒布罪に問われ、
その影響もあり倒産した様です。

志賀直哉の作品は、
文庫で「暗夜行路」を読んだことがあります。
ただ、あまり身を入れて読んでいなかったので、
ほとんど印象に残っていないのが正直なところです。
この「早春」もたまたま古書市で出会ったのであって、
志賀作品をきちんと読んでみるきっかけに
なればいいと思います。


2017/03/05

【古書検印集】夏目漱石 草合(春陽堂 縮刷第13版)



夏目漱石 草合(春陽堂 縮刷第13版)
奥付より



この縮刷13版は大正9年の本です。
漱石は大正5年に亡くなっていますので、
それからしばらく経って世に出た本です。

今、ふと思ったのですが、
漱石の本に検印を押していたのは誰だったのでしょう。
もちろん生前から漱石自身が
せっせと一人で押印していたなどと考えるのは
ちょっと不自然だと思うのですが、
もしかすると、家族総出で分担して押印していたのでしょうか。
そういう場面を想像してみると、ちょっと可笑しいですね。


2017/03/05

尾崎紅葉 多情多恨(岩波文庫)



尾崎紅葉 多情多恨
岩波文庫  第3刷
印刷 三陽社 平成25年11月6日
カバー 精興社
製本 中永製本





これは昨年読んだ本です。
物語はまさに「多情多恨」と呼ぶに相応しいもので、
これ以上似つかわしい表題はないのではと思います。

主人公の鷲見はとにかく、
亡くした奥さんが恋しくて恋しくて仕方がないのです。
奥さんもここまで慕われて幸せだ、というよりも、
こんなにいつまでも恋い焦がれられては
死んでも死にきれないのではないでしょうか。

親友の葉山はこんな時、
大いに力になってくれるのではありますが、
鷲見は葉山の奥さんが何処となく苦手であって、
葉山には会いたいけれども、
彼の奥さんが家に居る時はどうも
気が重たくなってしまうのです。
そこまで友人の女房を嫌う理由もないのでは
と思ってしまうのですが、
この辺りの描写が実に滑稽で、また微笑ましいのです。
要するに、人付き合いが苦手なのですね。

私には鷲見の人となりに、
どことなく共感できる部分もありましたので、
かなりの長編なのですが
とんとん読み進めてしまいました。

ちなみに、物語の処々に挿絵があって、
いいアクセントになっています。